嘘よりも真実よりも
 以前、顔と名前しか知らないと言っていたのではなかったか。

「富山ビルでたまたま。ああ……、俺の気持ちはすっかり見透かされていたな。鋭い方のようでした」
「清貴さんはよくお調べになるのが好きだから」

 清貴さんが富山ビルに行くのは珍しい。偶然を装って、総司さんに会いに行ったのかもしれない。

「なるほど。俺の素性を調べたんですね。みちるさんの相手としてふさわしいかどうか」
「金城さんはもったいないぐらいの方です」
「では、ふたりのお兄さんたちは反対してない?」

 仁志さんも清貴さんも、本当のところはどう思ってるのだろう。彼氏がいてもいなくても心配はするけれど、結婚となれば、私の素性は隠せないし、帰ってこいと言ってくれる気がする。

「……いつでも、帰れる場所を作ってくれる方たちです」
「そうですか。本当に大切にされてる。俺はそれ以上に大切にしないといけないですね」
「私は……金城さんを大切にできそうにないです」
「いいんです。少しずつ交際に前向きになっていただければ」

 自信のない私が、やっぱり総司さんとお付き合いするなんて無理なんじゃないか、そう思って手を離そうとしたけど、彼はそうさせないようにしっかりと握ってくれた。

「終わる時のことばかり考えなくていいんですよ。何事も選択肢は多くあった方がいいですが、恋愛は俺一択であればうれしいです」
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