嘘よりも真実よりも
 清々しい総司さんの表情を見たら、熱くなりかけていた心の炎が消えていくみたいだった。

 結婚はできないし、しないだろう。

 気持ちに制限をかけて、彼を愛していくなんて苦しいんじゃないか。このまま、彼への思いなんて消えてしまえばいいのかもしれない。そんな風に考えてしまって、落ち込む。

「そんな悲しい顔しないで、何かあるなら話してください」
「……一緒にいるって、簡単なようで難しいですね」

 そう言ったら、彼は不可解そうに眉をひそめた。

 そんな総司さんの表情が、飯沼さんの表情に重なった。

 飯沼さんは私と付き合ってると疲れると言った。総司さんもいつか疲れてしまうだろう。

「お互いを信じていれば、ずっと一緒にいられますよ」

 信じる……。

 父と母はお互いを信じられずに離れたのだろうか。何があっても一緒にいたら、今ごろ私は……。

「金城さんとなら、ずっと一緒にいられますか?」
「みちるさんを信じられるかと聞いているんですか? もちろんですよ。信じてください」

 簡単に、信じる、と彼は言う。だけどきっと、彼にとってはとても簡単なことなのだろう。私が思うより、ずっと。

「では、そろそろ行きましょうか。美術館が閉まってしまいますよ」

 総司さんは優しげに目尻を下げてほほえむと、私の手を引いた。
< 62 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop