嘘よりも真実よりも
「まあ、いいだろ、それは」
「良くないけどな。総司には先越されてばっかりだ」
「幹斗はひとりか?」

 総司さんはあからさまに話をそらす。

「これから飲み会だよ、飲み会。受付の子と部下の子たちで」
「受付って、椎名さん? 楽しそうだな」
「総司の方が楽しそうに見えるけどな」

 茶化す幹斗さんに、彼は苦笑いする。

「椎名さんは話し上手じゃないか。退屈しないだろ?」
「退屈しない話だといいけどな。椎名さんのお姉さん、結婚しただろ? 相手がすごいやつらしくてさ、自慢したくて仕方ないらしいよ」
「またそのうち、聞かせてくれよ。じゃあ、俺たちは行くから」

 話が長くなりそうで、総司さんは軽くあしらうように言う。気心が知れた仲なのか、幹斗さんも気を害す様子なく、うなずく。

「呼び止めて悪かったよ。……彼女さん、またね」

 無邪気な笑顔で手を振る幹斗さんに、無言で頭をさげる。どうしても、初対面の相手には警戒してしまう。

「行こうか、みちるさん」

 立ち去る幹斗さんの背中を見送り、見えなくなった頃に、総司さんは私の肩に手を置いた。

「あ、はい」

 うなずいて、彼に寄り添う。
 総司さんの世界に一歩踏み込んだような気がして、不安が増す。新しい人に出会うのは苦手だった。

 飯沼さんは、清貴さんが紹介してくれた人だったから安心して会えた。彼は必要以上に私を誰かに会わせようとはしなかったし、彼の交友関係は、清貴さんの交友関係でもあった。

「大学時代からの友人です」

 私の不安を察してか、総司さんがそう言う。
< 64 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop