嘘よりも真実よりも
*
「みちる、今から出かけるのか?」
玄関を出ると、帰宅したばかりの清貴さんが、驚いたように月の浮かぶ空を見上げて、尋ねてきた。
「お食事だけしてきますので、すぐ帰ります」
「金城さんと?」
「はい。さっき、連絡をいただいて」
にこっとしてうなずくと、清貴さんまでにこやかになって、私の肩をそっと叩く。
「幸せそうで何より。あ、そうだ、みちる。四乃森直己の結婚相手、兄さんから聞いた?」
「結婚相手……いいえ」
唐突な話に眉をひそめる。
「そうか。俺は別件で聞いたんだけどさ、兄さんの耳にも入ってるはずだよ」
「明日、仁志さんが一緒にお昼ごはん食べようって言ってたので、その話でしょうか」
「かもな。一応、知っておいた方がいいだろ? 仮にも父親なわけだしな」
「……あの人を父親だなんて思ったことありません」
何を今さら、という思いがある。
四乃森直己は母の万里を捨て、華々しい芸能界で生きてきた。昔を忘れたように、名俳優だなどともてはやされて、まるで、誇らしい人生を歩んできたかのように振る舞っている。
「まあ、そうだけどさ、そういう話じゃないよ。みちるの唯一の肉親なんだから、知る権利はあるって話だよ」
「わかりました。知ることは拒みません」
清貴さんは四乃森直己に対して、大した感慨を持っていない。六花社に勤務しているから、仕事上、あの人の話を耳にするだけだろう。
だから、事務的に連絡するつもりで私に話したのだろうが、心は凍りついていくみたいだった。
「それでいいよ。じゃあ、金城さんと楽しんでこいよ」
今の私は無表情だろう。自覚するほどに冷めた目で清貴さんに頭を下げる。すると、彼は私の手首をつかみ、後ろ頭をなでた。しかし、何も言わずに、私の背中を軽く押して、送り出してくれた。
「みちる、今から出かけるのか?」
玄関を出ると、帰宅したばかりの清貴さんが、驚いたように月の浮かぶ空を見上げて、尋ねてきた。
「お食事だけしてきますので、すぐ帰ります」
「金城さんと?」
「はい。さっき、連絡をいただいて」
にこっとしてうなずくと、清貴さんまでにこやかになって、私の肩をそっと叩く。
「幸せそうで何より。あ、そうだ、みちる。四乃森直己の結婚相手、兄さんから聞いた?」
「結婚相手……いいえ」
唐突な話に眉をひそめる。
「そうか。俺は別件で聞いたんだけどさ、兄さんの耳にも入ってるはずだよ」
「明日、仁志さんが一緒にお昼ごはん食べようって言ってたので、その話でしょうか」
「かもな。一応、知っておいた方がいいだろ? 仮にも父親なわけだしな」
「……あの人を父親だなんて思ったことありません」
何を今さら、という思いがある。
四乃森直己は母の万里を捨て、華々しい芸能界で生きてきた。昔を忘れたように、名俳優だなどともてはやされて、まるで、誇らしい人生を歩んできたかのように振る舞っている。
「まあ、そうだけどさ、そういう話じゃないよ。みちるの唯一の肉親なんだから、知る権利はあるって話だよ」
「わかりました。知ることは拒みません」
清貴さんは四乃森直己に対して、大した感慨を持っていない。六花社に勤務しているから、仕事上、あの人の話を耳にするだけだろう。
だから、事務的に連絡するつもりで私に話したのだろうが、心は凍りついていくみたいだった。
「それでいいよ。じゃあ、金城さんと楽しんでこいよ」
今の私は無表情だろう。自覚するほどに冷めた目で清貴さんに頭を下げる。すると、彼は私の手首をつかみ、後ろ頭をなでた。しかし、何も言わずに、私の背中を軽く押して、送り出してくれた。