嘘よりも真実よりも
「お子さまのご予定とか、うかがってもよろしいですか?」
「授かり物ですので、自然の流れに任せようと妻とは話しています」

 直己は誠実な態度で嘘をついていた。

 いや、彼にとってはそれが真実なのかもしれない。彼の中で、私は存在してないのだ。久我みちるなんて、この世にいない。

 テレビ画面に見入っていた時、後ろでキシッと音がして、ビクッと飛び上がった。

「あー、みちる。驚かせたか? ごめんごめん」

 愉快そうに笑いながら、清貴さんがリビングに入ってくる。あわててテレビを消して、立ち上がる。

「いらっしゃったんですか? お車がなかったから、てっきり……」
「いや、忘れ物取りに帰ってきた。すぐに行くよ。ほら、みちるに手紙。ポストに入ってた」
「手紙……?」

 無造作に清貴さんが差し出す白い封筒を両手で受け取る。

 封筒の宛名には、富山豊彦様方 久我みちる様、と書かれている。

「差し出し人が書いてないから気になるな」

 封筒をひっくり返す。清貴さんの言う通り、封筒の裏には何も書かれていなかった。宛名も印字されたものだ。

「俺が開けてみようか?」

 少しばかり気遣うように、彼は言う。

「あ、いえ、自分で開けてみます」

 テレビの横にあるチェストからペーパーナイフを取り出して、慎重に開封する。中をのぞくと、一枚のびんせんが入っていた。

 親指と人差し指でつまんで、びんせんを取り出し、三つ折りになったそれを開く。

「……何も、書いてないです」
「はっ? 何にも?」
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