嘘よりも真実よりも
 心配そうに見守っていた清貴さんも、拍子抜けした声をあげる。

 私はうなずいて、びんせんを広げて彼に見せる。真っ白なびんせんは、まっさらな状態で三つ折りにされていた。

「気味悪いな」
「そうですね。こんな手紙は初めてです」

 ため息まじりにつぶやくと、清貴さんは目尻を下げて、私の肩に手を置く。

「その手紙、俺が預かっていいか?」
「清貴さんが?」
「ちょっと調べてみる」
「調べるって……」

 探偵でもないのに、と少々あきれてしまうけど、私から封筒とびんせんを取り上げた清貴さんは自信満々に笑む。

「こういう時のために飯沼がいるんだろ? ま、ゴシップなんて書かないけどな」
「飯沼さんに調べてもらうんですか?」

 元彼の飯沼さんは、ライターだった。六花社から発売されてるビジネス雑誌で記事を書いている。彼の文章は明瞭で的確だと評判が高い。

「みちるのためなら動くさ。口だけは硬いから安心だしな」
「飯沼さんなら安心だけど……」
「みちるが心配してるって言っておくよ。飯沼にはご褒美になる。まあ、よりを戻すのは無理だって釘刺しておくけどな」

 返事に困って眉を寄せると、清貴さんはふと腕時計を確認する。

「みちる、兄さんと食事するんだっけ? 送ろうか?」
「まだ時間があるので、大丈夫です。あの、本当に飯沼さんに?」
「飯沼も顔が広いし、何かわかるかもしれないからな。たまには頼れよ」
「……わかりました。お願いします」

 頭を下げると、清貴さんはうれしそうに目尻をさげる。

「みちるは変わったな」
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