嘘よりも真実よりも
 今はどちらかというと、後者の視線だった。でも、彼女とは面識がない。四乃森直己と久我みちるの関係を探ろうとする、マスコミ関係者とは到底思えない。

 なんだろう。彼女の視線は私にまとわりついて離れる気配がなかった。

「あれ? みちるさん」
「えっ、総司の?」

 ふと聞こえた会話に、ハッとする。受付の女性から目をそらし、前方の人波へ目をやる。奥から現れた、ふたりの男性に驚いた。総司さんと幹斗さんだった。

「みちるさん、どうされたんですか?」

 今朝、月末まで会えませんね、と話したばかりの総司さんは、驚いたようにやってくる。

 凛々しい彼を前にしたら、昨夜の彼が思い出されて、知らず、赤らんでしまう。

 力強くも優しく抱いてくれた彼は、目の前の彼とはギャップがあって、どちらも素敵だけれど、昨夜の彼は私しか知らない彼なんだろうと思えて、ドキドキしてしまった。

「仁志さんとお食事の予定があって」

 ほんのり染まるほおに手をあてながら答えると、総司さんは私の心を見透かしたみたいに、からかうような笑みを瞳の奥に浮かべる。

「そうでしたか。お昼に会うのも可能なんですね」
「あ……自宅で仕事をしてるので、少しの時間ならだいたいいつでも」
「わかりました。月末まで待たなくても、また会えそうですね」
「は、はい……」

 にやにやする幹斗さんが、至ってまじめに会う算段をする総司さんの脇をひじでつつくから、恥ずかしくなって一歩下がる。

「あ、総司、椎名さんが見てる」

 幹斗さんは小さな声でささやくと、ますます彼の脇を急かすようにつつく。

 思い出した。受付の女性の名前は、椎名だ。

「じゃあ、私、行きますね」

 そっと彼らから離れ、エレベーターホールへ向かう。さっきまで張り付いていた視線が離れていくのを感じた。
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