嘘よりも真実よりも
「……すごく優しい方とは思います」
「結婚は、どう考えてる?」
「……」

 返事に困る。途方にくれて、彼と目を合わせた。

 私たちはまだ付き合い出したばかりだった。結婚をゴールとするなら、ゴールのない付き合いがいつまで続くかなんてわからない。

 だけど、総司さんが結婚を考えてくれるなら、私の決断は一つしかないように思う。

「結婚を望んでくれるなら、結婚したいと思うぐらい素敵な方だと思ってます。でも、私が久我みちるである以上、結婚できないと思ってます」

 私の決意を、仁志さんは複雑そうに眉をさげて受け止める。

「直己さんは今や、国民的に人気のある俳優だよ。金城さんが真実を知っても、受け入れてくれるのではないかな」
「まるで、結婚してほしいみたいな言い方されるんですね」
「みちるには、幸せになってもらいたいと思ってるからね」

 だから、私を諦めたというのだろうか。
 総司さんなら、私を幸せにできると思うから?

「いくら知名度が上がっても、あの人の犯した罪が消えるわけじゃありませんから。仁志さんがおっしゃる通り、血は水より濃いんです。私があの人の娘である事実は、何をしたって、消えないんです……」

 どこまでも、四乃森直己は私を追い詰めるだろう。交流などないのに、生きてるだけで、あの人は私に重い荷物を担がせるのだ。
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