嘘よりも真実よりも
***
富山ビルの入り口を出ると、白い息が鼻先をかすめていった。もうすぐ11月が終わる。肌を刺すような冷たさに肩をすくめ、ポケットからスマホを取り出す。
週末はみちるに会えるだろうか。
来月はクリスマスもある。彼女を喜ばせるプランはすでに考えてあった。
誕生日はまだ聞いてなかったな、なんて思いながら、週末の約束を取り付けようと、メールを打ち込んでいく。
俺はまだ、彼女について知らないことがたくさんある。
「金城さんっ、今からお帰りですか?」
送信ボタンを押そうとした時、椎名彩香がひょこっと俺の前に顔をのぞかせた。
「ああ、椎名さん。椎名さんも?」
「はい」
「今日は遅いんだね。おつかれさま」
俺を待ってたのかもしれない。そう思いながらも、いつものように軽く受け流して一歩踏み出す。しかし、彩香は人懐こく俺にまとわりつく。
「金城さん、たまには一緒に飲みに行きません? この間、三好さんと飲み会したんですけど、金城さんも来るって聞いてたのにいらっしゃらなくて、残念に思ってたんです」
「あー、幹斗の誘いは受けたり受けなかったりでね」
幹斗もいい加減なことを言ってるんだなと、苦笑いする。
「近くに美味しいイタリアンレストランがあるんです。行きません?」
「悪いね。今日はまっすぐ帰るよ」
「いつもお忙しそうですもんね。じゃあ、明日はどうですか?」
「明日のことは明日にならないとわからないから」
「じゃあ、いつならいいんですか?」
前に回り込んできた彼女は道を塞いで、俺を見上げる。そのまなざしは強くて、まっすぐだった。
彩香が真剣なら、俺だって誠意を持って接するしかない。
「……そうだね。彼女に悪いから、女性とふたりきりで飲みには行けない」
「意外と、律儀なんですね」
「律儀か。まあ……、そうかな」
内心、ちょっと笑ってしまった。
これまではどうだっただろう。みちるだけは特別な気がしている。彼女に愛想を尽かされたくなくて、軽率な行動を取らないよう、いつも以上に注意している。
富山ビルの入り口を出ると、白い息が鼻先をかすめていった。もうすぐ11月が終わる。肌を刺すような冷たさに肩をすくめ、ポケットからスマホを取り出す。
週末はみちるに会えるだろうか。
来月はクリスマスもある。彼女を喜ばせるプランはすでに考えてあった。
誕生日はまだ聞いてなかったな、なんて思いながら、週末の約束を取り付けようと、メールを打ち込んでいく。
俺はまだ、彼女について知らないことがたくさんある。
「金城さんっ、今からお帰りですか?」
送信ボタンを押そうとした時、椎名彩香がひょこっと俺の前に顔をのぞかせた。
「ああ、椎名さん。椎名さんも?」
「はい」
「今日は遅いんだね。おつかれさま」
俺を待ってたのかもしれない。そう思いながらも、いつものように軽く受け流して一歩踏み出す。しかし、彩香は人懐こく俺にまとわりつく。
「金城さん、たまには一緒に飲みに行きません? この間、三好さんと飲み会したんですけど、金城さんも来るって聞いてたのにいらっしゃらなくて、残念に思ってたんです」
「あー、幹斗の誘いは受けたり受けなかったりでね」
幹斗もいい加減なことを言ってるんだなと、苦笑いする。
「近くに美味しいイタリアンレストランがあるんです。行きません?」
「悪いね。今日はまっすぐ帰るよ」
「いつもお忙しそうですもんね。じゃあ、明日はどうですか?」
「明日のことは明日にならないとわからないから」
「じゃあ、いつならいいんですか?」
前に回り込んできた彼女は道を塞いで、俺を見上げる。そのまなざしは強くて、まっすぐだった。
彩香が真剣なら、俺だって誠意を持って接するしかない。
「……そうだね。彼女に悪いから、女性とふたりきりで飲みには行けない」
「意外と、律儀なんですね」
「律儀か。まあ……、そうかな」
内心、ちょっと笑ってしまった。
これまではどうだっただろう。みちるだけは特別な気がしている。彼女に愛想を尽かされたくなくて、軽率な行動を取らないよう、いつも以上に注意している。