嘘よりも真実よりも
 妹じゃない?

 俺はますます眉をひそめた。

 そんなはずはない。みちるは仁志や清貴を兄と慕っているし、清貴だって否定しなかった。

 現に、みちるは富山家に暮らしてるじゃないか。彼女を何度か送迎し、豪邸と言える屋敷に入っていく姿も確認している。

「椎名さんが、作り話をする理由がわからないよ」

 少々非難めいた言い方をしてしまった。ショックを受けた彩香を見たら、嫌われたな、と気まずくなる。職場で出会う女性とは、極力もめたくなかったのだが。

「悪いけど……」

 追い討ちをかけられるとでも思ったのだろうか。俺が口を開くと、彩香はうっすら涙を浮かべて、無言で走り去った。

 嫌な気分だ。

 俺と付き合ったばかりに、みちるは変なうわさを立てられて、知らないところで傷つけられる。

 ため息をついて、スマホを取り出す。まだ送信してなかったメールを削除して、電話をかけた。無性にみちるの声が聞きたかった。

「もしもし、総司さん?」

 みちるはすぐに電話に出た。声を聞くと落ち着く。彼女は綺麗なだけじゃない。その優しい声音そのものが、彼女の繊細な優しさを表してるのではないかと思う。

「急に、悪いね。仕事中?」
「いいえ。少し休憩してました。総司さんはお仕事終わられたの?」
「今から帰るところなんだ。あさっての土曜、会えないかなと思って電話した」
「大丈夫です。何時でも」

 みちるは大して予定を入れないのか、いつもデートの誘いに即答する。そんなところにも、安堵する。

「じゃあ、11時に迎えに行くよ。ああ、それと、誕生日はいつ?」
「誕生日……? 3月ですけど……どうして?」
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