嘘よりも真実よりも



 早めに帰宅した清貴さんの車で、ホテルベリシマに向かった。

 金曜日の夜の繁華街は賑わっていて、穏やかな日常を好む私は、緊張感もあいまって、浮き足だっていた。

 ひとりだったら、来れなかったかもしれない。清貴さんが、大丈夫さ、と楽観的に笑うのを見たら、人より少し私は神経質で心配症なのだろうと思った。いつも私は彼の明るさに助けられている。

「それにしても、こんな手紙だけじゃ、相手がいたってわからないよな」

 真っ白な封筒をひらひらさせて、清貴さんはレストランカランコエへ入っていく。

「さゆみさんのお顔はご存知ないですか?」
「ああ、知らない。みちるとおんなじで、非社交的らしいからな。パーティーにも出てこないらしい」
「そうなんですか……」
「万里さんもおとなしい人だったよな。あんまり覚えてないけどな」

 清貴さんはおかしそうに肩を揺らすと、出迎えに現れたグリーターに気安げな笑顔を向ける。

「いらっしゃいませ、富山様。いつもありがとうございます」

 グリーターはうやうやしく頭を下げる。どうやら、清貴さんはカランコエの常連客みたい。

「久我の名前で2名の予約が入ってると思うんだけどね、ひとり追加で頼めるかな」
「承知いたしました。すぐにお席へご案内いたします」
「ありがとう」

 清貴さんは目を丸くする私にニッと笑う。

「ビンゴだったな」
「あてずっぽうですか?」
「ベリシマは椎名グループのホテルだけどさ、予約なしで来ないかもしれない客を待てるレストランじゃない。かといって、みちるが来るまで毎日予約も無理だろう。今日来なかったら、別の方法で接触してくるつもりだったかもな」
「そこまで考えてらしたんですね」
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