嘘よりも真実よりも
 そう言って、彩香さんはバッグから封筒を取り出した。

「写真はこの中に入っていたそうです」
「見なくてもいいものを見ると、悩みは増えるよな」

 急に身を乗り出した清貴さんは、彼女から封筒をひょいっと取り上げる。

「母さん、か」

 久我直己宛の封筒の裏には、富山未知子の名前があった。

「元カノからの手紙を大事に持ってるとでも思った? 綺麗好きなお姉さんも、好奇心には勝てなかったんだな」

 清貴さんは封筒の中をのぞき込み、便せんを引っ張り出す。三つ折りになったそれを開き、さっと目を通す。

「あなたの娘は無事に成人しました……か。母さんらしいな、わざわざ報告するなんて」

 そう言って、便せんを私の方へ突き出してくるから、両手で受け取る。視線を落とす。そこには、柔らかだけど、達筆な文字が並んでいた。

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久我直己様へ

お久しぶりね、直己さん。今日は長年のうらみつらみを綴ろうかと思ったのだけど、やめておきますね。

あなたにもご苦労はあったと思いますが、それはみちるには関係のないこと。少しぐらい会いに来てくれるかと期待していたのだけど、それも無理なようですね。

テレビでの活躍、拝見しています。みちるはあなたがテレビに映るとジッと見つめていますよ。どんな思いで見つめているのか、私たちにもわかりません。でも、子どもは大人の都合で成長をやめるわけではありませんからね、みちるはこの3月で、はたちになりました。

あなたの娘は、無事に成人しましたよ。ようやくというのか、あっという間というのか、みちるは想像以上に立派に育ちました。

成人式の写真を同封しておきます。あなたに似て、とても綺麗で、万里さんに似た優しいみちるを、ずっと心に留めておいてくださいな。

これからも、心の中だけでも、みちるを見守っていてあげてね。


富山未知子

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