いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
「その必要はない」
割って入ったのは聞き覚えのある声だった。顔を向け、史織は目を見開く。もっと驚いたのは叔母ふたりだったろう。
いつの間に入ってきていたのか、ショーケースのそばに泰章が立っていた。
「なにをしているのですか。誰が、ここまで来て余計なことをしていいと許可しました?」
おだやかだが迫力のある声音だ。叔母ふたりは完全に動きが止まってしまい、泰章を見たまま表情を固め、動けない。
「どうもあなたたちは余計な行動が多いようだ。だいたい、誰にいらぬ因縁をつけたかおわかりか。よほど私の機嫌を悪くしたいらしい。事業への支援の件も、考えさせてもらう」
「泰章さん……! それは……」
「待って、そんなことになったら……!」
固まっていたふたりだが、よほど困ることを言われたのだろう。ふたり一緒に言葉を出そうとする。
しかし泰章にギロリと睨まれ、急に小さくなってしまった。
「行きなさい。あなた方がいるだけで空気が悪くなる」
ひどい言われようだが、間違いではない。現に、ケーキを落とすハプニングからふたりが大声を出しはじめ、客がひとり、またひとりと店を出ていってしまった。
まだなにか言いたそうではあったものの、これ以上粘ればさらに泰章の逆鱗に触れる。叔母ふたりはそそくさと店を出ていった。
泰章は純子の前に立つと、スッと頭を下げる。
「オーナー、申し訳ございません。当家の親戚がご迷惑をおかけいたしました」
「いいえ、こちらこそ烏丸さんが来てくださって助かりました」
頭を上げた泰章が史織のそばに寄ってくる。左頬を手のひらで包み込んで撫でた。
「大丈夫かい?」
「泰章さん……」
「叔母たちが迷惑をかけた。すまない、もう少しきつく言っておくべきだった。二度とこんなことがないよう念を押しておく」
優しい口調にドキリとする。しかしそんなときめきも、人前だから作っているだけだと思うとスッと冷めていった。
「どうしたんですか。お店に来たりして」
「なにを言っているの。今日は火曜日だ、君のお薦めを受ける日だろう?」
先週も火曜日にはケーキを買いに来た。『いきなり顔を見せなくなるのも薄情だろう? 常連なのに』そう言って笑っていたので、表向きは徹底的に仲のいい夫婦を装いたいのだろう。
頬を包む手が離れない。ふと、このままずっと、この包まれるような優しさに触れていたいと思ってしまった。
割って入ったのは聞き覚えのある声だった。顔を向け、史織は目を見開く。もっと驚いたのは叔母ふたりだったろう。
いつの間に入ってきていたのか、ショーケースのそばに泰章が立っていた。
「なにをしているのですか。誰が、ここまで来て余計なことをしていいと許可しました?」
おだやかだが迫力のある声音だ。叔母ふたりは完全に動きが止まってしまい、泰章を見たまま表情を固め、動けない。
「どうもあなたたちは余計な行動が多いようだ。だいたい、誰にいらぬ因縁をつけたかおわかりか。よほど私の機嫌を悪くしたいらしい。事業への支援の件も、考えさせてもらう」
「泰章さん……! それは……」
「待って、そんなことになったら……!」
固まっていたふたりだが、よほど困ることを言われたのだろう。ふたり一緒に言葉を出そうとする。
しかし泰章にギロリと睨まれ、急に小さくなってしまった。
「行きなさい。あなた方がいるだけで空気が悪くなる」
ひどい言われようだが、間違いではない。現に、ケーキを落とすハプニングからふたりが大声を出しはじめ、客がひとり、またひとりと店を出ていってしまった。
まだなにか言いたそうではあったものの、これ以上粘ればさらに泰章の逆鱗に触れる。叔母ふたりはそそくさと店を出ていった。
泰章は純子の前に立つと、スッと頭を下げる。
「オーナー、申し訳ございません。当家の親戚がご迷惑をおかけいたしました」
「いいえ、こちらこそ烏丸さんが来てくださって助かりました」
頭を上げた泰章が史織のそばに寄ってくる。左頬を手のひらで包み込んで撫でた。
「大丈夫かい?」
「泰章さん……」
「叔母たちが迷惑をかけた。すまない、もう少しきつく言っておくべきだった。二度とこんなことがないよう念を押しておく」
優しい口調にドキリとする。しかしそんなときめきも、人前だから作っているだけだと思うとスッと冷めていった。
「どうしたんですか。お店に来たりして」
「なにを言っているの。今日は火曜日だ、君のお薦めを受ける日だろう?」
先週も火曜日にはケーキを買いに来た。『いきなり顔を見せなくなるのも薄情だろう? 常連なのに』そう言って笑っていたので、表向きは徹底的に仲のいい夫婦を装いたいのだろう。
頬を包む手が離れない。ふと、このままずっと、この包まれるような優しさに触れていたいと思ってしまった。