いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
が、それは許されることではない。
史織は由真を見るふりをして泰章の手から離れる。由真は目を丸くしてこちらを見ていた。
「……新婚さんって、すごい」
ハッとして急に恥ずかしくなる。今の雰囲気は、人前で出すものではなかったのかもしれない。確かに少々、ふたりの世界に入りかかっていた。
「ゆ、由真ちゃん、ありがとう。庇ってくれて」
「いいえ、だって、本当のことだし……。あたしの方こそ……なんか、親戚の人に失礼な言いかたをしちゃって……」
由真はチラリと泰章を見る。彼が親戚と言っていたので『オバさん』発言を気にしたのかもしれない。泰章もそれに気付いたのだろう。にこりと微笑んで小さく首を左右に振った。
「気にしないで。それより、妻を庇ってくれてありがとう」
由真は会釈をしながらも「ひゃー」っと小声で胸の内を表す。なんだか史織の方が恥ずかしくなってきた。照れ隠しに純子に向き合う。
「オーナーお騒がせして……」
「史織ちゃんが悪いんじゃないよ。私に謝るより、先に謝らなくちゃならない人たちがいるでしょう?」
史織は「はい」と返事をして、店に残っていた三人ほどの客に直接「お騒がせいたしまして申し訳ございませんでした」と頭を下げる。幸い、いやな顔をする客はひとりもいなかった。それどころか「大変だね」「当たり屋みたいな人ってたまにいるよね、頑張って」と励まされたのである。
「申し訳ございません。本日はどのようなものをご希望ですか?」
あくまでも店の人間として泰章に声をかける。彼は身をかがめてジッとショーケースに見入っていた。
その横顔にドキリと鼓動が高鳴るときめきとは違うそれは、彼の目がどこか厳しいものに見えたからだ。
「今日は、店長とは違うパティシエの仕事かな?」
「はい、そうですが」
週に一度の来店でも、泰章だって常連だ。おまけに洋菓子を扱う会社の社長なのだから、こういったものには目が利くのだろう。
デザインは同じでも入江ほどのダイナミックさはない。そこが気になるのだろうか。
「いいな……」
「はい?」
身体を起こし、泰章はショーケースの中を見つめたまま微笑んだ。
「全体の雰囲気がとても優しい。派手ではないが目を引くものがある」
なにげなく目を向けた先に國吉がいる。もしかして泰章は彼がいることをわかっていて褒めたのではないかと感じた。
史織は由真を見るふりをして泰章の手から離れる。由真は目を丸くしてこちらを見ていた。
「……新婚さんって、すごい」
ハッとして急に恥ずかしくなる。今の雰囲気は、人前で出すものではなかったのかもしれない。確かに少々、ふたりの世界に入りかかっていた。
「ゆ、由真ちゃん、ありがとう。庇ってくれて」
「いいえ、だって、本当のことだし……。あたしの方こそ……なんか、親戚の人に失礼な言いかたをしちゃって……」
由真はチラリと泰章を見る。彼が親戚と言っていたので『オバさん』発言を気にしたのかもしれない。泰章もそれに気付いたのだろう。にこりと微笑んで小さく首を左右に振った。
「気にしないで。それより、妻を庇ってくれてありがとう」
由真は会釈をしながらも「ひゃー」っと小声で胸の内を表す。なんだか史織の方が恥ずかしくなってきた。照れ隠しに純子に向き合う。
「オーナーお騒がせして……」
「史織ちゃんが悪いんじゃないよ。私に謝るより、先に謝らなくちゃならない人たちがいるでしょう?」
史織は「はい」と返事をして、店に残っていた三人ほどの客に直接「お騒がせいたしまして申し訳ございませんでした」と頭を下げる。幸い、いやな顔をする客はひとりもいなかった。それどころか「大変だね」「当たり屋みたいな人ってたまにいるよね、頑張って」と励まされたのである。
「申し訳ございません。本日はどのようなものをご希望ですか?」
あくまでも店の人間として泰章に声をかける。彼は身をかがめてジッとショーケースに見入っていた。
その横顔にドキリと鼓動が高鳴るときめきとは違うそれは、彼の目がどこか厳しいものに見えたからだ。
「今日は、店長とは違うパティシエの仕事かな?」
「はい、そうですが」
週に一度の来店でも、泰章だって常連だ。おまけに洋菓子を扱う会社の社長なのだから、こういったものには目が利くのだろう。
デザインは同じでも入江ほどのダイナミックさはない。そこが気になるのだろうか。
「いいな……」
「はい?」
身体を起こし、泰章はショーケースの中を見つめたまま微笑んだ。
「全体の雰囲気がとても優しい。派手ではないが目を引くものがある」
なにげなく目を向けた先に國吉がいる。もしかして泰章は彼がいることをわかっていて褒めたのではないかと感じた。