いっそ、君が欲しいと言えたなら~冷徹御曹司は政略妻を深く激しく愛したい~
償わせるために利用して結婚した女に、こんなに優しくしてくれるはずはない。この裏にはきっとなにかある。最初に史織に優しい顔をしていたように、またなにかショックな出来事が待っているに違いない。
「やす……あき、さん……」
「なに? 史織……」
そっと顎を上げられ、ついばむように唇が触れる。心地よく、何度も触れては離れ、離れては触れ……。
――この愛おしい体温を、信じたい……。
――自惚れては、ダメ。また惨めになる……。
心が疑心暗鬼になる。眦に涙が溜まると彼の唇が優しくすくい取る。
「……タルトは……少し崩れてしまったけど、無事だ。後で一緒に食べよう。切り分ける必要なんかない。ふたりでフォークでつつこう」
涙があふれて止まらない。そのたびに泰章がさらっていく。まるで、泣いた跡を残さないようにしているかのよう。
「フルーツがたくさんのっていた。先に食べた方がいいのは、やっぱりオレンジ? ベリーかな? いっそ、フルーツは先に全部食べた方がいいんじゃないか?」
この優しさを、信じてもいいのだろうか――。
*****
腕の中で深い眠りに入ってしまった史織の顔を、泰章は見つめ続けた。
どのくらい見つめているのだろう。わからないがもう真夜中だというのはわかる。どれだけ見つめても見足りない。もういっそ眼の中に入れてしまいたい。
――書斎で夜を明かしてもいいと思っていたが、かろうじて史織を抱きかかえてふたりの部屋へ移動することができた。
その際、書斎前の廊下に、おにぎりや保温ジャーに入ったお味噌汁が置かれているのを見つける。……おそらく気を利かせた光恵がそっと置いてくれたのだろう。
若い新婚夫婦の痴話喧嘩。ふたりきりで部屋にこもったとなれば……。
しばらくしても音沙汰がないようなら、明日は仲良く姿を現すだろうと予想されていたに違いない。
さすがは年の功。泰章は納得するが、史織は盛大に恥ずかしがった。
泰章はトラウザーズのみ、史織は素肌に泰章が着ていたシャツを羽織っただけという姿で、ふたりでおにぎりを食べ、崩れたタルトをそのままつつき合った。それも、フォークを持ってくるのが面倒だということで箸で食べたのだ。
「やす……あき、さん……」
「なに? 史織……」
そっと顎を上げられ、ついばむように唇が触れる。心地よく、何度も触れては離れ、離れては触れ……。
――この愛おしい体温を、信じたい……。
――自惚れては、ダメ。また惨めになる……。
心が疑心暗鬼になる。眦に涙が溜まると彼の唇が優しくすくい取る。
「……タルトは……少し崩れてしまったけど、無事だ。後で一緒に食べよう。切り分ける必要なんかない。ふたりでフォークでつつこう」
涙があふれて止まらない。そのたびに泰章がさらっていく。まるで、泣いた跡を残さないようにしているかのよう。
「フルーツがたくさんのっていた。先に食べた方がいいのは、やっぱりオレンジ? ベリーかな? いっそ、フルーツは先に全部食べた方がいいんじゃないか?」
この優しさを、信じてもいいのだろうか――。
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腕の中で深い眠りに入ってしまった史織の顔を、泰章は見つめ続けた。
どのくらい見つめているのだろう。わからないがもう真夜中だというのはわかる。どれだけ見つめても見足りない。もういっそ眼の中に入れてしまいたい。
――書斎で夜を明かしてもいいと思っていたが、かろうじて史織を抱きかかえてふたりの部屋へ移動することができた。
その際、書斎前の廊下に、おにぎりや保温ジャーに入ったお味噌汁が置かれているのを見つける。……おそらく気を利かせた光恵がそっと置いてくれたのだろう。
若い新婚夫婦の痴話喧嘩。ふたりきりで部屋にこもったとなれば……。
しばらくしても音沙汰がないようなら、明日は仲良く姿を現すだろうと予想されていたに違いない。
さすがは年の功。泰章は納得するが、史織は盛大に恥ずかしがった。
泰章はトラウザーズのみ、史織は素肌に泰章が着ていたシャツを羽織っただけという姿で、ふたりでおにぎりを食べ、崩れたタルトをそのままつつき合った。それも、フォークを持ってくるのが面倒だということで箸で食べたのだ。