偽装結婚の行く末
「あ、遠藤さん」


佐久間は何か言いたそうだったのに、通りかかった総務の遠藤さんを見つけてそっちに歩いていく。
しかし遠藤さんは無言でUターンして佐久間と距離を取った。

分かる、なるべく関わりたくないよね。
懸命な判断だと思う。


「遠藤さんご機嫌ななめみたい」


しばらくして、ちょっと傷ついた顔で戻ってきた佐久間。


「あんたと関わりたくないだけでしょ、遠藤さんクズは嫌がりそう」

「クズじゃねえよ」

「は?」


自業自得でしょ、とため息混じりに思ったことを言ったらすぐ反論された。


「俺、好きな子できたからもうクズじゃない」


見たことのない爽やかな笑顔で宣言した佐久間。
……もしかして、それを言いたかったの?
表情からしてかなり本気っぽい。

気になる、クズ男を心変わりさせるほどの相手はいったい誰なんだろう。


「あたしの知ったことか」


気になるけど、あたしはあたし、佐久間は佐久間。
あたしたちの人生は二度と交わることはないから、ここで線引きしないと。

鼻で笑うようにあしらったつもりだけど、佐久間はなぜか嬉しそうに微笑んだ。
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