偽装結婚の行く末
「ああ、麗奈さんこんばんは。会えて嬉しいです。今日はあなたに彼女のことを紹介したいと思っていたんです」


昴は話の邪魔をされまいと早口になってる。


「彼女、って?」

「婚約者の美優です」


上目遣いで昴を見つめる彼女は婚約者、の言葉に目だけ動かしてあたしを見て顔を一瞬歪ませた。
え、怖っ。リアクションが露骨すぎ。


「ええっ、本当にいらしたんですね。
はじめまして、こんにちは美優さん。私、麗奈と申します。
昴さんとは仲良くさせていただいてます、ふふ」


名前だけ名乗って自分がどこの誰かは言わないんだ。
たぶん大学生かな、この世間知らずな自己紹介な感じ。

てか、婚約者って紹介された女の前でいきなりマウントかよ。
すごいなこの女。

昴は「美優もあなたと会いたがっていたんですよ」と無理やりあたしを押し出して自分はドリンクを取りに行くついでに目当ての社長と話を始めた。

……はぁ、気が重いなあ。


「素敵ですね、そのドレス」


まあやるっきゃない。と意気込んだ瞬間麗奈とかいう女が話しかけてきた。


「……ありがとうございます」

「でも、黒い服って葬式みたいですね」


ん?なんつったこの女。
喉元まで出た『は?』という言葉を慌ててのみこむ。
あぶな、常識外れの直球ストレートにあたしの仮面が外れるところだった。

ウソでしょ、まじで性格悪いなこの女。
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