偽装結婚の行く末
冷静になれ、感情的になったら負けだ。
私は営業スマイルを携えて女に近づいた。


「そうですか?昴が買ってくれたものなので気に入ってます」


呼び捨てからの買ってくれたってアピール。


「私には黒が似合うって。あの人センスいいですもんね」


間髪入れずに昴が買ったものを貶すなと皮肉を込めて笑いかける。


「麗奈さんも昴からプレゼントもらいました?」

「私はネックレスをもらいましたけど?」


すると自慢げに首から下げたネックレスを見せつけてきた。
ふん、引っかかったな小娘。


「やっぱりそうですか。
最近同棲を始めたんですけど昴ったら身の回りの事全部してくれて。
あの人世話焼きだからいろいろ買っちゃうんですね」

「ど、同棲?」


同棲を強調すると驚いて目を見開く。
いいリアクションするじゃん、そこだけは褒めてあげる。


「あれ、ご存知なかったです?半年後には籍を入れるからもう同棲しちゃおうって話になって」

「そうだったんですね……でも、昴さんはモテるから大変ですよ。
きっと昴さんを狙う人はたくさんいます」

「ええ、昔からモテモテなんですよあの人。
それでも『俺の事を理解してくれてる幼なじみのお前がいい』って言ってくれたんです」


畳みかけるように幼なじみアピールをすると、目を泳がせて「幼なじみ……?」と意気消沈していた。
なーんだ、大したことないじゃん。


「私、幸せ者です」


トドメに満面の笑みをお見舞いする。
ぐうの音も出ない女は負け惜しみで睨んできたけど何も言わず離れていった。

勝った……!やったよ昴、撃退したよ!
勝ち誇って振り返ると昴はこっちを見向きもせず目当ての男と談笑していた。

そうよね、あんたはあたし自体に興味無いわけだし。
あーあ、ムキになって頑張っちゃってバカみたい。
ムシャクシャしたから通りかかったウェイターからもらったスパークリングワインを飲み干した。
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