偽装結婚の行く末
「……楽しかった。あっという間に時間が来てしまった……」
「放心状態なのウケる」
気がつけば時刻は22時。お店に入ってから3時間も過ぎていた。
夜風に当たって酔いを覚ます。
……ああ、夢のような空間だった。
気分はタイムスリップと言うより、まるで異世界。
そして美人な芸妓さんにお酌されて飲みまくって完全にできあがってしまった。
「マジで、芸妓さんに恋するかと思った。なにあの色気と優雅な立ち振る舞い……。
あたし女でよかった……通いつめるところだった」
「美優には無いものだから憧れるよな」
「……昴はそういうのが好き?」
酔ってるから普段聞けないことも聞ける。
首を傾げると、昴は片方の眉を上げて驚いた顔を見せた。
「色気ムンムンな女が好きなわけ?」
「お前酔いすぎだろ、おっさん味が増してね?なんだよその言い回し」
しかし酔った頭で聞くことじゃなかった。
笑われてちょっと恥ずかしい。
「うるさいなあ、今更じゃん。
逆にあたしが女子っぽい言葉遣いだったら猫被ってるとか言うくせに」
「はいはい、酔いすぎな。さっさとホテル行くぞ」
大きな声で反論すると腰に手を添えられ連行される。
「ねえ、ひとりで歩けるって」
「行きに『石畳につまづいちゃう』ってビビってたの誰だ?」
「あたしそんな変な声じゃない」
「そうだな、お互い酔っぱらいだからこれ以上言い争うのはおしまい」
「勝手におしまいにしないでよね〜」
その後もなんだかんだ言い合いながらタクシーを捕まえてホテルに向かう。
夜の京都は東京と違ってどこか現実離れして幻想的。
東京に帰るの嫌だ、なんて子どもじみた考えでホテルに向かった。