偽装結婚の行く末
繋いでいた手を引き寄せて抱きしめられる。
……夢じゃなかった。嬉しくて涙がこぼれた。
昴はその様子をじっと見て、そして満足気に笑う。


「やっと美優のかわいい泣き顔が見られた」

「……泣いてない!」

「はは、でっけえ声」


小馬鹿にしたような声。だけど今まで見た中で一番優しい笑顔。
見とれていたらキスをされた。流れるような動作だから拒めなかった。


「俺のこと信用できない?」

「そうじゃないけど……」

「万が一何かあったら、俺の両親に言ったらいい。
お前のこと自分の娘みたいに思ってるから」


あたしの頬に伝う涙を指先で拭って、不安を少しでも軽減させようとしてくれる。
その優しさが心に染みてまた涙がこぼれた。


「それから、律にも何度も言われた。
いつになったら姉ちゃんと付き合うんだって」

「律、そんなこと言ってたの?」

「律にはバレてんのに、肝心の美優が疑心暗鬼になって俺に見向きもしないから内心焦った。
旅行に行きたいっていうから絶好のチャンスだと思ったのに、酔いつぶれて覚えてないなんて……美優は一筋縄じゃいかねえな」

「うっ、それは……ごめんなさい」


たしなめるような言葉に下を向く。
昴はそんなあたしの顔を無理やり持ち上げて、目線を合わせた。
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