内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「お先に失礼しまーす」

「はーい。お疲れ」

 仕事もひと段落し、入れ替わり人員が来て、早朝から勤務だった私は店を出る。

 エプロンを外してダウンジャケットを着こみ、もこもこの耳当てをつけて自転車にまたがった。

 私の住むアパートは、ここから自転車で十分という都会の真ん中にある。

 といっても豪華マンションではない。築年数は古くて六畳一間という私の身の丈に合っているアパートだ。

 途中、買い物帰りらしい下の階のおばあちゃんとすれ違った。

「こんにちは」

「あら、おかえり」

 自転車をしまって、あちこち錆が見える階段を上り、「ただいまー」と声をかけて入るのは昔からの習慣で、誰かが待っているわけじゃない。一人暮らしにはもう慣れた。

 悠は、素敵なマンションに住んでいるのかな。

 一流企業にお勤めだから、きっといい部屋に住んでいるんだろう。

 高そうなスーツを着ていたし、声をかけられなきゃ悠だなんてわからなかったと思う。

< 26 / 158 >

この作品をシェア

pagetop