内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 今ならば迷わず連絡先の交換をしただろうに、あの頃の私たちはまだ子どもだったし、スマホも持っていなかった。施設に会いに行けばいつでも悠がいると思っていたから、そんな知恵も浮かばなかったのだ。

「急だったんだ。父と名乗る人が現れてね」

「え! そうだったの? じゃあ、今は家族といるんだね?」

「うん。まあそうだね」

 うなずき、瞼を落としてワインを飲む悠は、どこか寂しそうだ。

 あの頃と同じ影が見えるのは、気のせい?

 家族ができたのにうまくいっていないのだろうか。

 悠は母子家庭で育ち、十歳の頃に母親が亡くなって施設に引き取られたと聞いている。父親については聞いた記憶がない。

 どんな父親だったのかとか、今はどんな家族の中で暮らしているのか、聞いたらいけないのかな?

「僕もね、探したんだよ? 千絵が預けてくれた住所を訪ねたんだ。でも、引っ越した後だった」

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