内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 えーっと、女の子の日が終わって一週間。私はだいたい二十八日でそんなに狂わないから。
 あっ。もしかしたら私、本当に妊娠しちゃうかも?

「おーい。千絵さーん。元気ですかー」

 ハッとして運転席を振り向くと、ハンドルを握ったヒサ君が、目の端で私を怪訝そうに見ていた。

 ヒサ君は大学四年生で、卒業後はこのまま紫violaに就職する予定らしい。
 樹木や花を心から愛する、頼りになる後輩である。

「どうしたんですか、さっきからひとりで百面相しちゃって」

「うーん。ちょっと考え事」

「今日ずっと変ですよねー、なにかあったんすか?」

「私は今ね、人生最大の分岐点に立っているのだよ」

「え、まさか男っすか」

 まさかってなによ。いくら男っ気がないからってさ。

 眉間をひそめてヒサ君を睨んだ。
「ブー。それ、セクハラ」

「千絵さんに男できちゃったら俺がっかりだなー」

「どうしてヒサ君ががっかりすんのよ」

「いない者同士じゃないですかー、抜け駆けは禁止ですよー」

 他愛もない話をしていると、ヒサ君が「あ、イケメン御曹司、発見」と言う。

「どこどこ」

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