内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 メニューは言わずとも適当に出してくれる。最初の頃こそ聞かれたが、その都度『おすすめで』と答えているうちに、いつの間にか聞かれなくなった。そんなところも楽でいい。

 仁が瓶ビールを持ってきて俺のグラスに注ぐ。

「サンキュー」

 お通しは、牡蠣の燻製だった。

「そういや見合いどうなった?」

「なかなか難しいね」

「で、言ったのか? 例の」

「うん。言った。『僕は潔癖症でね。他人に触れられないんだ』ってね。『だからセックスはおろかキスすらも無理なんだ』ってさ」

 仁はゲラゲラと声を上げて笑う。

「本当に言ったのか。学園で女の子をとっかえひっかえしていたお前を、彼女が知らないわけないだろうに」

「そうかなぁ。彼女は青扇じゃないからね」

 神林家の人間になった僕は、父の命令で青扇学園に編入した。

 資産家の子女が集まる青扇は学び舎であると同時に社交場でもある。成人前から人脈を広げるというわけだ。

 だがカレンは青扇じゃない。知らなくても自然だと思うが。

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