離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 そわそわとして、今すぐこの場から逃げ出したいような感情。

 咲良にこのまま顔を見つめられたくない気がして目を逸らすと、くすくす笑う声がした。

「笑いごとじゃないよ。俺からすれば一大事なんだ。咲良からのチョコなんだぞ」

「そんなに大げさなものじゃないって」

「食べないで取っておこうかな」

「腐っちゃう……」

 たしかにせっかく咲良がくれたものを食べないという選択肢はない。

「開けてもいいかな」

「もちろん。もう智秋のものなんだから好きにしていいんだよ」

 俺のものになっても、まだ好きにできない特別なものがひとつだけあることを彼女は知らないのだろうか。

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