離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 智秋はシャンパングラスを軽く揺らし、立ち上る泡を眺めていた。

 何度も盗み見た端正な顔立ちは、最後の日であっても私の胸を騒がせる。

 長いまつげ、すっきりと通った鼻筋。焦げ茶色の目を隠すように前髪がかかっている。男性にしては少し長いが、最後に髪を切ったのは三ヶ月近く前だと言っていたから無理もない。

 一年過ごしても橘智秋という男は理解するのが難しかった。

 ひと言で表すなら〝変な人〟だ。

 彼は一年間の契約結婚だと自分が言ったくせに、私を本物の妻のように扱った。

 咲良と呼ぶ声は優しく、さりげなく触れる指先の感触も震えるほど甘かった。

< 37 / 235 >

この作品をシェア

pagetop