離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 いつ私がいなくなっても彼の日常はこれまでと同じように回っていく。

 それを寂しいと思うのは百パーセント私のわがままだ。

 智秋がそうする理由を頭でしか理解できず、心が泣いている。

「よく考えたらあなたがどんなふうにたちばなの若旦那をやってるのか知らないや。ちゃんと仕事をしてるの?」

 皮肉っぽい嫌な言い方になる。

 だが、私は本当に橘智秋という人について知らない。

「ひどいなぁ。毎日真面目に働いたから咲良のために時間を取れたんじゃないか。最後の夜くらい夫婦らしくしたくてね」

 智秋が揺らしていたシャンパングラスを口もとに引き寄せ、小さな泡を生み続ける金色の液体を喉に流す。

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