カクレンボ
 まずかばんからイヤホンを出した覚えがないのだけれど…。
「投げるよ?」
「え?そこから?」
 パッと下を見るとわかっていたことだけれど高い。 
 落ちそうだけれど大丈夫なのだろうか。
「はい!」
 声とともに届いたのはイヤホン。スローモーションに見えて取るのは容易だった。
 ゆっくりと目でイヤホンをおい、すっと手のひらで包み込むようにキャッチした。
「届いた?落ちてない?」
「大丈夫。ちゃんと来たよ」
 雪が目一杯顔をだして確認してくる。所々雪の子供らしい一面を見ると、昔と変わっていないんだなと安心感が湧いてくる。 
「ありがと」
 届くか届かないかギリギリの声量だったけど、雪がにっこりと笑ってくれてから多分伝わったと見てもいいだろう。
 にこりと笑った雪は外の景色に目を移した。
「もう今年も終わっちゃうね」
 雪が柵に組んだ腕をおいて、その上に顔を置いた。 
 何となくでわたしも雪と同じ格好になる。
「なんか、あっという間だった」
 入学当初は詰まった予定で毎日がヘトヘトだったけれど、慣れてきてからはもう同じことの繰り返し。そこに
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