カクレンボ
 ちょっと違う毎日がやってくるだけ。新しい友達ができたとか、4人で久しぶりに集まったとか。そんな他愛のないことが積み重なっていつの間にか今に至っている。
「もうすぐ大学選ばないとなー」
 雪が組んだ腕の中に顔を埋めた。
「まだ早いんじゃない?」
「華は、進学?就職?」 
 そう訪ねてきた雪の右頬は腕に潰されていた。
 わたしは口角を下げ、頭を抱えた。
「まだ何も決めてないんだよね」
「将来の夢とかないの?」
「夢…」
 今まで、ただ風船のようにふわふわと飛んでいた。大人になるための空気に身を任せていた。
 自分のことほど興味がわかず、自分の将来のことを全く考えたこともなかった。
 自分を知らないから、降った雪は溶けて消え、赤い花ばかりが色をつけていく。
 少し、今考えたことが他人事じゃない気がして背筋をなぞられたみたいな感覚がしてならなかった。
「今のとこないかな。雪は料理続けるの?」
 雪の料理の腕ならお店を開いても充分やっていける。お世辞とかではなくて心の底からそう思う。
「続けると思うけど、他人(ひと)に出すのはちょっと気が引けるよ」
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