カクレンボ
少し残念だなと思ったけれど、雪らしいとも思った。
雪は、「でも…」と続けた。
「でも、次の夏祭りの屋台はだそうと思ってるよ」
「そうなの?」
わたしは耳を疑ったけれど、雪がふんわり笑っているのが見えて、本当なんだと確信した。
「うん。そりゃ華とかにあんなに勧められたら、流石にね。逆にやりたいなって思った」
思考が前向きになったからか組んだ腕をほどかれて、顔が上がった。手を伸ばし、細い腕がはっきりと見えるようになった。
わたしたちの高校は駅が近く、その駅では毎年夏祭りが行われているのだが、この高校から、一学年につき1グループ出し物ができるのだ。もちろん食べ物でも金魚すくいでもいい。自分たちなりに考えた斬新で新しい発想からできた屋台も出たことがあるらしい。
去年クラスでその話を聞いたとき、わたしも、空も桜も雪ならやると言うと思った。
でも、雪は断った。理由を聞いても「まだ他人に出せるほど美味しくない」の一点張り。
何回か誘ってみたけれど、最初に折れたのはわたしたちの方だった。
わたしも雪の作った料理がみんなに売れると思ったし、雪の料理を食べたかったから、ショックだった。