カクレンボ

「屋台はやりたいけど、みんなにも手伝ってほしいかな」

「みんなって?」

「空も、桜も、もちろん華にも」

 雪が指折り数えて、指腹を向けてきた。

「わたし、料理できないよ…それに人見知りだし、接客も…」

 下を見れば、人見知りが治るまでの距離と同じくらい遠くに車の走る地面が見えた。

 これでも雪たちのおかげで結構治ったほうだとは思うけれど、それでもまだ桜みたいに誰にでも話しかけれるような気の強さも度胸も持っていない。

「まあ、あの二人だから大丈夫でしょ」

 過信しているようにも聞こえたけれど、実際のところ本当にそうかもしれない。

 そうやって思うくらいわたしは空と桜を信頼している。雪もそうだ。

 いつかは知らないといけないことがあるかもしれない。それがたとえ辛い現実でも幸せな夢でも。ふとそんな考えが浮かんでいるわたしはどこかおかしいのだろうか。

「早く夏になればいいね」

 自分の願望と雪の願いを乗せた言葉と裏腹に、真っ白い雪が空に待っているのが確認できた。

「まだ遠い先かもね、太陽が元気になるの
は」

 なぜか一本取られたみたいな悔しさが湧いてきた。
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