カクレンボ
「最初どこから行こうか」

 エレベーターを降りてエントランスを出たあと、別れ道でわたしたちは立ち止まった。
 
 この別れ道は、買い物の行く順番を決めるためのものだ。でも、これが重要な選択だったら。一本道を間違えるともう取り返しのつかないほど大変なことになってしまうかもしれない。わたしもまた、間違った道を孤独に歩いていく。

「ケーキは最後のほうがいいんじゃない?だからはじめは、まずはチキンとか?」

「そうだね。じゃあスーパーだね。ここからだと2丁目のスーパーが近いかも」

 「行こっか」と雪を溶かしてくれるような笑みを浮かべてきて、わたしの緊張を凍らせてきた。雪の背中が遠くなっていこうとも、しばらくは足が凍ってしまって動けなかった。
 

 
「うわ…すごい人」
 
 スーパーについたのはいいけれど、いつもの5倍くらいの人で、足の踏みばがないほどだ。

「離れないでね。服かカバン持っててもいいよ」
 
 お言葉に甘えることにしたわたしは雪のリュックを軽くつかんだ。それでも手を離してしまえば終わりだから、離れない程度に強く持った。
 
 人はどこもかしこもいっぱいでこのスーパーの中に安息の地なんてないみたい
< 21 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop