カクレンボ
わたしと雪は同じマンションに住んでいる。部屋番号がわたしは奇数で雪は偶数なので、部屋の間取りが左右あべこべ。まるで鏡の中の異世界みたいに。
それも昔からだからもう慣れているけれど。
「じゃ、すぐ行くからなー」
「わかった」
空と桜に手を振った。
分かれ道でそれぞれの家に歩む。またすぐに会えるというのに、ちょっとの寂しさが胸の底に湧いていた。
「じゃあ、また後でね」
「うん」
同じ階でエレベーターを降りた。
部屋も雪と隣同士だ。
ガチャリと扉を開けても『おかえり』を言ってくれる人はいない。お父さんは単身赴任で、九州にいるし、おかあさんは夜遅くまで働いて、家に帰ってこない日もあるくらいだ。
寒い体を暖めるためにシャワーを浴びて、私服に着替える。今は短針が6の真ん中に居座っている。
別に早くきてねと言われているわけではないけど少し急いだほうが良さそうだ。
もうふたりも来ているかもしれない。
徒歩10何秒という近さにいるわたしがドベというのは少し遅すぎる気がする。
身支度を終えたわたしは鍵を閉めて雪の部屋に向かった。