カクレンボ




 無事に私達は進級できた。明日からまた学校が始まる。クラスもまた新しくなる。そのお祝いというか、季節的なものもあり、4人でお花見に行こうという話になり、今日がちょうどその日。
「意外と人いない?」
「そうだな。まあ俺らがくる時期が遅いってのもあるんだろうけど」
 男性陣が先導してくれている。わたしと桜ちゃんはその後ろをついて歩き、既にきれいだねとか感想を言い合っている。
 今年のお花見は来たことのない公園でしてみようと言う話になり、家の近くにあるけどまだ来たことのない公園に来た。何と言っても広く、池もあり秋には紅葉が成るそうだ。こういうのは花が好きな雪くんが調べて情報をくれる。
「ここでいい?」
 レジャーシートを持つ雪くんが大きな桜の樹の下で立ち止まる。
「私はいいよ」
「よし、決まりね」
 雪くんは私の返事を聞くとすぐにシートを広げ始めた。雪くんと空くんの連携によって大きなレジャーシートもすぐに広がった。この大きさなら高校生4人が座るスペースもお弁当を置くスペースも確保できる。角にそれぞれの靴を置き風でレジャーシートが飛ばないようにした。
「まず弁当だろ!」
「まだ早いわよ。11時よ?」
「でもすることないだろ」
「じゃあもう弁当でいいわ」
 もはや通過儀礼となった桜ちゃんと空くんのじゃれ。大晦日の神社のとき以来、ふたりの進展だとかは特に聞かないようにしてる。見当違いだと申し訳ないから。でも今までの感じ見ていると特にこれといった変化はなさそうだ。空くんは告白されたと言ったあの日。数時間前に桜ちゃんが空くんに告白するんだと私に宣告した。多分その言葉の責任はあのとき背負っていた私よりも何倍も重かったんだろう。
 春風が悪戯に髪を揺らしてくる。靴で抑えていなかったらレジャーシートは今頃バサバサとめくれ上がっていたかもしれない。
「味見してないからまずかったらごめんね」
 雪くんが出した大きな2段弁当が開けられた。思わず玉手箱や〜と某芸人もリアクションをしてしまいそうなほど見た目はきれいだ。卵焼き、サンドイッチ、おにぎりなど、定番で、なおかつ食べやすいものばかり。もちろん味も美味しくて、文句のつけようがない。
 料理がこんなにも上手にできたら楽しいのかな。自分の思うままの味を、出来上がりを想像して作り、想像のままにできたら、楽しいかな。
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