カクレンボ

 雪もつられたのか笑っている。

「たっだいまー」
  
 玄関の扉が開くと共に空の元気な声が聞こえてきた。今考えれば人の家にチャイムも鳴らさずに入ってくるのはどうかと思うけど…。この4人の仲だから許されているところがあると思う。

 幼稚園の時からまるで成長してない空が大きな足音を立ててわたしたちのいる場所まで来た。

「ほら、買ってきたぞ」

 スーパーの袋を雪に差し出したそら。

「ほとんどあんたのでしょ」

「ほんとだ。でもチョコちゃんと買ってきてくれたんだ」

「チョコ?なんでチョコ?」

「隠し味だよ。美味しくなるから」

 ゆきがチョコを買ってきてくれだなんておかしいと思ってたら隠し味か。

 カレーにチョコ?まあよく聞くけれど、本当に美味しいのだろうか。なんだっけ…こ、コク?がでるとかなんとかだったような。

 当たり前だけれどわたしはそんなもの作ったことがない。

 隠し味とか、考えた人はどんな頭脳をしてんだろ。どうやったらカレーとチョコが合うだなんて考えたんだろう。

「まだはやいし、お菓子でも食おうぜ」

 空が袋の中からクッキーを取り出した。じゃじゃーんと効果音がつくみたいな勢いだ。

「そうだね。カレーももうすぐできるとこだし」

 ゆきが煮込んでいたカレーを覗き込んでから言う。ここで初めて雪がカレーを作っていると知った。カレーの色をしてないからなにか全くわからなかった。

 ゆきの言葉が糸を切り、わたしたちはテーブルの椅子に腰をおろす。  

「じゃーん!今日はこんなクッキー買ってきましたー!」
 
 空が袋から出したのはチョコクッキーと普通のクッキー。

「いっつも買ってるでしょうが。何がじゃ~んよ」

 空は食器棚からちょっと大きなお皿を出して、ダイニングテーブルに置いた。そこに今買ってきたクッキーを雑に開けお皿に出した。

「食べようぜ〜。冷めちゃうぞ」

 冗談を交えた空がわたしたちを手招きで呼んだ。

「今年パーティどこでするつもりなんだ
?」

 他愛のない話をしてたとき、そういえばっといった感じで空が口を開いた。
 
 パーティ。そう、わたしたちはクリスマスパーティーを毎年している。小さな頃はみんなの家族が集まっていた。去年は子供だけで、空の家でやっていたので、空のお母さんだけはいたけれど。
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