カクレンボ
 ふたりの洞察力が高いのは知っていた。だから途中からはバレないようにと隠していたのに。
「安心して。華にはバレてないから」
「華は鈍感だもんね」
「…まあね」
 僕は彼女のことを思い浮かべ、振り返ってみると自然と笑いが出てきた。
「告白しないの?」
「そんな。幼なじみだもん。変えたくないよ」
 変えたらどうなるかわからない。変えて悪くなるなら、このままでいい。自分で変えてもうまくいくっていう確信が持てるときが来るまではこのままがいい。
「なんか雪らしい」
「だって、壊れるのは一瞬だから。大変なのは積み上げる時。どんな建物も、小さな傷が、亀裂が致命傷になる。でも、被害を抑えることはできるでしょ?修復が可能か不可能か。喧嘩もなしにいる関係でいたい。最低でも、謝って治せる関係でいたい」
 だから完成する前の友人関係は強いのだ。土台だけだから、相手を知る前だからごめんの1つで修繕ができる。僕らの関係は強い。相手に絶対的な信頼がある。僕は空が頭おかしいだとかうるさいやつだと思っているけど、それが彼のいいところ。桜だってもう少し女としての自覚をしてほしいけれど僕はそういう桜が面白くて好き。華は、寝坊助で少し不器用だけどそこに華の可愛さがある。
「うちらは、まず崩すようなことがないようにしないとね!」
「ここなら大丈夫って、僕は信じてるよ」
「…そうね」
 桜と空。ふたりの洞察力は確かに高い。でも僕だってそこそこ高い方。もちろんわからないことのほうが多い分、2人のほうがうえ。でも僕には今の桜の考えていることが少しわかった。彼女が今見ている未来は、今日みたいな冷たくて暗いものだ。






「あのときは告白しただけ。その後にふたりで集まって、付き合うことになったってわけ」
 なるほど。だからあの日はふたりが遊べなかったのか。1つスッキリした。でもここでまた新たに疑問が生まれていた。
「だから雪も、華に告白していいよ?」
「しないよ。前も言ったように」
 僕はきっぱりそういう。理由も前と変わらない。
「もう。慎重だなあ」
 桜が頬を膨らませた。稀にこういう乙女の所を見せてくる。僕たちはそういう面があるというのを知っているけれど、学校の人達は多分この桜の姿を見ると男子は落とされそう。それはまるで僅か1ヶ月だけ花を咲かせる桜の木のようだ。
「男なんだからガツンと告っちゃえってば!」
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