カクレンボ
 桜に背中を叩かれる。それはエールのようにも感じ取れた。
「ま、雪は自分から何か求めようとするタイプじゃないもんね。でも、時には奪いに行くのも大切だよ?」
「空に告白した人が言うと説得力が違うね」
「でしょでしょ?」
 桜が前のめりになる。いつの間にか座っていて、桜の絨毯が柔らかい。
「まああんたの自由だけど、なるべく早くしなさいよ!」
「なんで?」
「華かわいいんだから、すぐ取られちゃうかもじゃん?」
 桜の言う通りなのかもしれない。華は顔が整っている。華奢で大人しい人柄だからこそミステリアスで、他の人から見れば華は謎に満ちているだろう。僕たちも華の全ては分からないんだもん。
「取られるのは嫌でしょ?」
「まぁ…確かに」
 僕は反論の余地無しと言ったところだった。でも、
「応援はする!だから早目に告りなよ!」
 でも僕は、少し気になることができていた。ほんの些細なことなのかもしれないけど、桜らしくない何かを感じさせるには充分なほどだった。

 桜と桜並木道を散歩し終え、帰るとまだ華は寝ていた。空はスマホをずっといじっていた。
「おお。帰ってきたか」
 僕たちに気づいた空がスマホをポケットにしまう。
「華まだ寝てるの?」
「華は1回寝たら起きないよ」
 年始の時もそうだった。それを知っている僕は華が眠いと言っている段階から不味いとは思っていた。
「起こす?それとも寝かせたまま帰る?」
 桜、華の寝姿みるの初めてじゃないでしょ。あ、でもそんなに華みんなの前だとあまり寝ないか。だいたい僕といるときに寝るもんね。
「いいよ。このままで」
 僕はそう言い華の体を起こす。そしておんぶして靴を履く。彼女の靴は桜に持ってもらった。荷物も全部空と桜に任せた。
 大きくなったんだね。重みに僕はいつかの懐かしさと寂しさを抱いていた。その心には思い出とか辛い過去とかが入ってるから重たいんだろう。華はあんまし人にものを言うようなひとじゃなく、溜め込んでしまう癖がある。だからその分他でストレスを発散させているって前言ってたっけ。僕も感情は表に出さないから華に似た部分があると思う。僕もちゃんとストレスを発散方法を持っている。僕の場合は好きなことを好きなだけする。料理とか寝たりとかテレビを見たりとか。華は疲れたら思いっ切り寝てエネルギーを貯めるタイプ。寝て取れる疲れがあるってすごくいいな。
 
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