カクレンボ
 寝れるかな。シャワーを浴びて少し目が覚めたような気がする。でもまあ気のせいかな。少しでも力を抜いたらまぶたが落ちてくる。
 私はベッドに入った。眠いはずなのに中々眠れない。。雪くん。…どうしてるかな。私、もう高2だからひとりで寝れるのになあ……。
 まだ向こう?何も音してないし、雪も寝てるのかな。
 私が寝るまでって、雪君ここにいないとわからないでしょ。
 雪君に面倒かけちゃったな……。


 1時間近く経っても寝れなかった。なんだか無意識のうちに雪くんのことが頭の中で回っている。そしてこのまま寝れないかなと思って、リビングに行った。電気がついているからどうやら雪くんはまだいるみたい。扉に手をかけたけど、何故だか開けるのに戸惑う……。

 やっぱり帰る?……でも床についても寝れる気はしない。なんで自分の部屋なのにこんなに落ち着かないんだろ。

 結局寝れないよりはいいと思って、私はリビングに繋がる壁を壊した。そのくらい、このドアは重たかった。

 扉を開けて最初に目に入ってきたのはダイニングで優雅にココアを飲みながら本をパソコンを触っている雪君だった。まだ、起きてたんだ。

「華?起きてたの?」

 私は何故か雪君が起きていると確信して来た。こんなに深夜なのに。

「雪君こそ、なにしてたの?もう遅いから帰ってもいいのに」

「……うん。もう目も覚めちゃって寝れそうにないから朝までここいることにする」

 ココアをスプーンで混ぜて雪君はまた続けた。

「華朝ご飯何食べたい?つくってあげる」

「え?いいの?!」

 テンションが上がる。雪君のご飯は本当に美味しいから。

「華が食べたいのつくってあげる」

 優しく笑う。雪君はいつも私に笑顔をくれる。

『ホットケーキ』

 私は人差し指を立てて言った。雪君も私を指さして私と全く同じことを言った。

「やっぱり」

 雪君は堪えきれずに笑い出した。不意を突かれて指さされた私も、驚きから面白さに変わり、それは自然に笑いを誘う。

「ココア飲む?」

 笑っている雪君はココアが入ったマグカップを私に少し見せてきた。

「じゃあ飲む。飲んでから寝る」

 私は雪君の向かいに座った。四人でいる時はいつも雪君が私の隣りに座っているから、普段空君がいる席に雪君がいることが不思議。

 了解。と立ち上がった雪君は、ポットに再びスイッチを入れて湯を沸かし始めた。
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