ゆびきりげんまん
何より大切なこと
 七月になった。


「王子、新しいシーズン始まったね。仕上がりはどんなかな」

「そうだね」


 ともちゃんの言葉に気のない返事をすると、ともちゃんが私を真剣な目で見た。

 ともちゃんは時々こんな目を私に向ける。


「沙羅は、気にならないの?」


 気にならないわけがない。

 心の奥底では気になって仕方が無い。『スケルツォ』を弾く度に葵君を思い出す。でもそれを押し隠している。


「別に。王子頑張って欲しいな、と思うくらいだよ」

「頑張って欲しいな、か……」 


 少しともちゃんの表情が和らいだ。


「そうだ、私、リンクに行ってみようかな」


 ともちゃんの言葉に私の肩がぴくりと揺れる。


「い、いいんじゃない?」

「沙羅も一緒に行かない?」

「私は行かない」

「そう」

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