悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
「婚約者であるアマーリエ侯爵令嬢の侯爵家は、俺の派閥の一員なのだけれど……、どうやら本人が俺を裏切っているようなんだよね」
「う、裏切り……?!」

 不穏なワードにギョッとしたユリアーネとは対照的に、リーヴェスは爽やかに頷いた。

「そうそう!まあ、表面上は上手くやっているけれどね」

(つまり、裏ではかなり仲が悪いって事なのかしら……)
 逆によく王太子を裏切れるな、と感心してしまう。

「まあ、俺は品行方正で完璧な王太子で有名だから、婚約破棄の理由が向こうには見つからないんだろう」

 自分で言うなと思ったが、話がややこしくなるのでユリアーネはスルーした。

 そして、リーヴェスは腕を組んで悪い笑みを浮かべる。手を伸ばして、ユリアーネの髪をひと房掬い上げた。

「だから愛人に現を抜かす」

 掬い上げたユリアーネの髪に口付けを落とし、上目遣いで不敵に微笑みながら続けた。

「間抜けな王太子になってみようかなって」
「間抜けな王太子……」

 片膝をソファーに乗り上げ、ユリアーネの顎に手をかけて、上を向かせた。

「君は大きな釣り針なんだ。俺を追い落とそうとする奴らを釣ってくれさえすれば良い」

 ずっと浮かべていた人当たりの良い笑みはどこにもなかった。ユリアーネはしばし黙った後に。
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