悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
 コルネリウスは頭の後ろで両手を組む。ヴァイスは無表情のまま、考え込むように顎に手を当てた。

「リーヴェス兄上が……、ということは、子供でも出来たのでしょうか?」

 ヴァイスは深刻な面持ちで首を傾げるが、コルネリウスは軽く笑ってヒラヒラと手を振る。

「子供ぉ?オレもそこまでは分かんねーよ」

 そこではた、とコルネリウスは思い出したように続ける。

「そういえば愛人に会ってきたんだけどさ、特にお腹は膨らんでなかったなあ」
「会われたんですか?」
「まあね。リーヴェス兄上の好みって貧相な体付きの女って事が知れたくらいだな?オレはやっぱ胸……だけど」

 真剣な顔付きで話すコルネリウスに、ヴァイスは若干呆れた視線を寄越す。

「……そうですか」
「じゃ、オレはこの後用があるから」
「はい。失礼致します」

 ヴァイスはずっと無表情のまま、一礼する。いつもの通りと言わんばかりに、コルネリウスは大して気にも留めなかった。

 しばらく1人で廊下を進んでいたコルネリウスだったが、近くに人の気配を感じて、ふと真剣な顔面持ちに変わる。軽薄さはなりを潜め、その場の空気が重くなる。

「侵入の手引きはご苦労だった。引き続き動向を宜しく頼む――パウラ」

 廊下の柱の影に隠れたまま。姿を見せず、快活だった侍女は、感情の籠らない声で小さく返した。

「御意」
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