悪役令嬢の幸せ愛人計画〜王太子様に(偽)溺愛されています〜
 ユリアーネは目を大きく見開く。

(そうだ。この人は婚約者に裏切られた――)
 だから裏切らない人間が、欲しかっただけ、なのだろうか?

(だとしたら、この人は婚約者に裏切られて、傷付いているのかしら?)
 ユリアーネの瞳が揺れる。そんな彼女の心情など知る由もないリーヴェスが、にこやかな笑みを浮かべた。

「いいかい?君を大金で買ったのは俺だ。他にも尻尾を振ってくれるなよ?」
「振ってません!犬扱いしないでください!」

 あんまりな物言いに、ユリアーネの感傷的な気持ちは飛んで行った。




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 文官の制服を着崩したコルネリウスは、1人フラフラと歩いていた。王子らしくなく、供もつけずに歩く彼は、知った顔を見つけて、声を上げた。

「よっ!久しぶりだな愚弟よ」

 コルネリウスの方へ真っ直ぐ向かってくる黒髪の美丈夫。武官の制服を着こなし、2人の従者を従えている。コルネリウスよりも幾分か身長の高い彼は、紅い瞳を瞬かせた。

「コルネリウス兄上、お久しぶりです」

 固い挨拶を交わそうとする弟に、コルネリウスは世間話をするような気軽さで聞く。

「知ってっか?兄上が愛人を迎えたらしい……それも平民の!」

 ヴァイスの紅色の瞳が驚きで大きく見開かれる。

「コルネリウス兄上ではなく……、リーヴェス兄上がですか?!」
「待ってオレの印象どうなってんの?……まあ、時々遊んでっけどさあ」
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