一途な淫魔の執着愛〜俺はお前しか一生抱かない〜
 会場内に洸夜より遅れて入ると綾乃に「何話してたのよ〜」と揶揄をいれられたが「なんでもない」とスルーさせてもらった。あんな話できるはず無い。


「あ、日和、社長の挨拶始まるみたいよ」


 まるでアイドルが出てきたような会場のざわつき。イケメンとは凄い、前にでるだけでも会場の空気を揺らす。


(女の人達の目がハート、社長目当てで入会した人とかいそうだわ)


 綾乃が社長に釘付けなので日和は新しいケーキを並べていく。


「あの、ちょっといいですか?」
「はい、どうかなさいましたか? あ、ケーキのお代わりですかね?」


 日和に話しかけてきた黒髪の男性はニコッと目を細めて笑うと「いえ、本当はもっと食べたいんですけどお腹パンパンで」とスーツの上から自分のお腹を擦ってみせた。
 年下だろう、日和よりも若く見える男性は伊坂悠夜(いさか ゆうや)と名乗る子犬みたいな可愛らしい男性だった。


「僕、ここに会員登録してからイベントとかはあまり参加していなかったんですけど、今回はケーキバイキングだっていうから飛びついて参加しちゃいました」
「伊坂さんはケーキがお好きなんですね」
「はい、亡くなった母もケーキが大好きでよく二人で色んなお店のケーキを買って食べていたんです」


 少し寂しそうに口を締めた悠夜は「本当に今日は参加してよかったです」とまたすぐに笑顔に戻った。


「一人で寂しいから早く結婚したいのにケーキばっかり食べちゃって」
「それは、辛かったですよね……私も同じようなもんですよ。早く結婚したいのにケーキばっかり作って、でもそれが幸せなんですけどね」
「凄くいいと思います! あの……貴女のお名前を伺ってもいいですか?」
「田邉日和です」
「日和さん、素敵なお名前ですね。今度お店の方にもケーキ買いに行きますね。今日のケーキはパンフレットに載ってるシュガーベールさんですよね?」
「そうです」
「近いうちに絶対買いに行きますから! あと僕の事は悠夜って気軽に呼んでください」


 名字で呼ばれるのが嫌いなのだろうか、日和は子犬の名前を呼ぶような軽い気持ちで「じゃあ悠夜さん、ぜひ店頭でお待ちしています」と別れを告げた。
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