イケメンを好きになってはイケません⁈
 ち、ちょっと……わ、そんな、舌まで……こんなところで。

 抗議の意志を示すために、首をふると、すぐキスはやめてくれた。
 けれど、まだ懲りずにわたしの耳元で囁いてくる。
 プライベートの声で。
「こういうシチュエーション、ちょっと憧れてた」
「もう、こんなことしたら、だめだって」

 恥ずかしさを隠すために、あえてちょっと怖い顔をして彼をにらんだ。

「誰かに見られたらどうするの?」

「そのときはそのとき。付き合ってるって言えばいいだけだし」と、ぜんぜん悪びれる様子はない。
 
 もう……
 扉の横にある鏡で口紅がついていないか確認してから、彼は余裕の笑みを浮かべ、先にオフィスに戻っていった。

 ヤカンがピーっと大きな音を立て、慌てて火をとめた。

 ほんとにもう森下くんは……
 そう言いながらも、自然と顔がにやけてくるのを止めることもできなかった。
 
< 83 / 119 >

この作品をシェア

pagetop