俺の世界には、君さえいればいい。
「ぜったい手に入れる。あたしは欲しいと思ったものは手にしないと気が済まないの」
「…うわー、こっわ~」
「だから試合のときだって、あたし自分の身を投じたのよ?」
「自分の身?って?」
櫻井くんのために、なにより自分のために。
たとえ耳が痛くなる会話だとしても聞かなくちゃだめな気がした。
あのときの彼を苦しめた理由が、ここで分かるのならそれで。
あれは止められなかった私のせいでもあるし、なにより相手校の選手だって色んな意味で悔しい思いをしたはずだ。
「ぜんっぜんタイプでもない男に1回ヤらせてあげるって言ったの」
「…その代償は?」
「準決勝で櫻井 主計のアキレス腱を断裂させること」
櫻井くん、あなたの憶測は大当たりだった。
あのときの腫れた左足首を見つめながら青白い顔をしていた櫻井くんも、痛みに耐えながら戦っていた決勝戦も。
けれど苦しい思いをしていたのは櫻井くんだけじゃなく、反則ギリギリを故意的に出してしまったその相手校の選手もなんだと。
「それであたしが櫻井の傍で毎日心配して好きになってもらう計画だったのに大失敗」