俺の世界には、君さえいればいい。
「今日もマネージャーとして渡したチョコすら貰ってくれなかったわ。固すぎよ、ほんと」
「婚約者一筋ってことなんじゃない?」
「そんなの壊すに決まってるでしょ?地味女だけじゃなく少し櫻井にも灸を据えておかなきゃかなぁ」
だめ、そんなの絶対だめ…。
こうなることに私は毎日のように怯えていて、それだけは絶対にさせちゃだめだって。
なにをするの、櫻井くんに…あなたはこれ以上なにをする気なの。
「部員なんかほとんどあたし目当てだから、ちょーっと上目遣いしただけで騙されてくれる。
練習で怪我を悪化させろとでも言っておこうかな」
「…あいりってさー、ほんとに狙った男には容赦ないよね」
「櫻井と付き合えるなら他なんかどーでもいいの。だって金持ちであのルックスよ?
そのためにはどうにかしてでも───…由比 かなのには消えてもらわなくちゃ」
じゃあもし櫻井くんと横山さんが付き合えたら、櫻井くんを苦しめるのだけはやめてくれる…?
櫻井くんを笑顔にしてくれる…?
私が彼の傍からいなくなれば、周りにいるみんなを傷つけない…?
気づいたときには悪魔のような2人はいなくなっていて、ひとしきり泣いた私は静かに個室から出た。
*