俺の世界には、君さえいればいい。
そう思わせられるような別れの挨拶を言ってくる。
「櫻井くんには…、もっと、お似合いな子、いっぱいいるから……」
そんなのいらない、俺は由比さんといたい。
俺は由比さんとの未来をこれからも作っていきたかった。
「私…夢みたいでした、…本当に…夢みたいで、毎日ありえないことばかりで…っ、」
「…そんなの、俺もです」
「あ、足は…、大丈夫…?」
大丈夫じゃないです。
だから由比さんが手当てしてくれないと。
湿布、包帯、練習したんでしょ…?
前に由比さんのお父さんにしていたの、上手に出来てた。
だから俺にも同じようにしてくれなきゃ駄目じゃないですか───。
そんなふうに言いたいのに、言葉が詰まって言えなくて。
だから浅くうなずいた。
「初めて喋ったとき、花壇で声かけてくれて…ありがとう、…櫻井くん」
さようなら───…。
一番聞きたくなかった言葉を、由比さんの小さな唇が型どった。
由比さんのチョコレートも、俺の気持ちも、なにかが邪魔をするように渡してはいけない想いだったのか。
「あ、お兄ちゃんおかえり!またチョコたくさん貰ったんでしょ!?今年もわたしにちょーだいっ!」
「……ない。俺もう寝る」
「えっ!?ゼロなの!?うそぉ!?」