俺の世界には、君さえいればいい。




そうすれば櫻井くんも声をかけてこないから。

そもそもあんなにひどい言葉をたくさん浴びせた女になんか関わりたくないはずだ。


そう、これでいいの。

これで…横山さんだってきっと。



「ねぇ付き合ってるのかな?あのふたり!」


「そうなんじゃない?昨日も話してるの見たし」


「お似合いすぎて何も言えなーい!」



そんな噂も多くなった。

私がいなくなったことで、横山さんと櫻井くんはいい感じになっているらしい。



「まじ由比さんじゃなくて良かったぁ」


「本当だよねぇ、これで安心安心!」



だから私は今まで以上に目立たず、気配と影を瞬時に消す。


文化祭、クリスマス、お正月。

本当に夢みたいな日々だったと、スマートフォンに入った数少ない思い出を振り返った。



「っ…、」



文化祭は2ショットはないけれど、スクリーム姿の櫻井くんの後ろ姿だけを盗撮したりして。

お父さんとお母さんと櫻井くんと私で初めて迎えたクリスマスでは、4人で撮ったものと、お母さんが撮ってくれた2人での写真があった。


それからお正月の初詣は4つのおしること、櫻井くん。

ふたり並んだ1枚では初めてピースが出来たんだっけ…。


幸せそうに笑ってる───…。


いいの、いいんだよ。

これで大好きな人を守れたんだから。



< 170 / 253 >

この作品をシェア

pagetop