俺の世界には、君さえいればいい。
好きな人の幸せが一番なんだよ。
その人が笑って過ごしていることが、いちばんなの。
「チョコ、ありがとう。ゆっこ以外で貰えたのは後藤さんだけだったから…すごく、うれしかった」
「っ、」
「…また、明日ね」
静かに教室を出たところで、見慣れた顔が待ち伏せていた。
私と後藤さんの会話をずっと盗み聞いていたらしいゆっこ。
いつものゆっこらしさはなくて、だから代わりにぎこちない笑顔をつくる。
「ちょっとおいで」
「ゆっこ…?」
「いーから来るの!!」
「わっ…!」
ずけずけ近づいて、戸惑う私の手をぐいっと引いてどこかへ向かってゆく。
どうしてゆっこが泣きそうなの。
どうしてゆっこが、そんなにも怒っているの。
「なにがあったの、」
「な、なにもないよ…?」
「ねぇ、友達ナメんなよ」
……いつもより怖い。
ゆっこって、カチッとスイッチが入ると人が変わるところがある。
櫻井くんに対しても平気で失礼なことをたくさん言ったりもしてたから…。
連れてこられた場所は屋上だった。
普段は開放されていないのに、むしろ立ち入り禁止なのに、どういうわけかゆっこが鍵を持っていて。