俺の世界には、君さえいればいい。
揺れる瞳を誤魔化そうにも、まっすぐ見つめてくれちゃうから駄目だった。
気づけばポロポロ流れて、地面に落ちる涙。
私がひとつひとつ話すのを、ゆっこは黙って聞いてくれる。
櫻井くんとのこと、試合でのこと、横山さんのこと、後藤さんから受けたすべて。
そして───…私が下した決断。
ぜんぶを話し終わったとき、私はゆっこに抱きしめられていた。
「あーもうっ!さいってい…っ!!」
「ゆ、ゆっこ…?」
「こんなに近くにいて気づいてあげられなかった自分がっ、最っ低……っ」
涙腺は、滅びた。
ぱちんっと切れて、だって私よりもゆっこのほうが泣いてるから。
あんなこと本当はしたくなかった。
ずっと櫻井くんと一緒にいたかった、それなのに自分に嘘をついて櫻井くんを傷つけてしまった。
取り返しのつかないことをしてしまった。
そう思えば思うぶんだけ、ゆっこの腕の力は強まって、私を泣かせてくれる。
「うぅっ、ぁぁぁーーーっ、っ…っ、」
「…かなの、」
初めてだよ、こんなに泣いたのって。
いつも泣かないようにしてたから。